アンドリアの戦い(Battle of Andoria)とは、2154年にアンドリア星系の縁で起こったアンドリア帝国とヴァルカンの軍事衝突である。
長年続いていた緊張状態を背景にヴァルカン最高司令部がアンドリアに対し先制攻撃を仕掛けようとしたのがきっかけで起こり、2150年代の恒星間の政治に大きな影響を及ぼした。
前兆[]
2154年、ヴァルカン最高司令部のヴラス長官はアンドリアがズィンディ超兵器の第二プロトタイプを盗もうとしたことを知った。ヴラスは実際にはこの兵器がエンタープライズによって破壊されたという事実を都合よく省き、最高司令部にアンドリアがこのプロトタイプを使って艦隊を増強し、大量破壊兵器を作ってヴァルカン星を攻撃するだろうと説得した。そして、その脅威が始まる前にアンドリアに対して先制攻撃をすべきだと提案した。
ヴァルカン側はアンドリアに対する先制攻撃のために密かにレギュラス付近に12隻のヴァルカン巡洋艦を配備し、アンドリア領外縁部のパーン・モカー付近には偽装ワープ・サインを発する無人探査機を送り込んだ。アンドリア艦隊はヴァルカンがパーン・モカーを奪還するために戦力を集中していると見せかけるその罠に騙され、軍備をパーン・モカー付近に集中させた。ヴァルカンはアンドリアの戦力をパーン・モカーに集中させた隙に奇襲艦隊が国境を越えてアンドリアへ侵攻し最小限の被害でアンドリアを屈服させるつもりであった。
しかし、ヴラスの計画を知っていたソヴァル大使は、その数日前に起きた地球連合大使館が爆破された事件の調査のためヴァルカンを訪れていた地球船エンタープライズ(NX-01)に乗船し、クルーたちにその計画を教え、ヴァルカンの侵攻計画をアンドリア側に警告するためにシレック・シュラン司令官を探し出した。シュランはヴァルカンからの攻撃があればアンドリアは相応の報復攻撃を行い双方に多大な犠牲が出ることをソヴァルに指摘し、当初は計画の信ぴょう性を疑ったが、後にソヴァルの情報を信じて軍上層部を説得してアンドリア星系の外縁部に部隊を移動させた。しかし、軍がパーン・モカーに集中配備されていたことが原因で、ヴァルカン艦隊がアンドリア星系に差し掛かった時、迎撃部隊にはさらにクマリ級戦艦1隻と巡洋艦2隻が加わっただけの戦力であり、アンドリア軍上層部はエンタープライズに対して支援を要請した。
エンタープライズと6隻のアンドリア艦による連合艦隊は迫り来る12隻のヴァルカン艦隊と対峙し、ヴァルカン側の攻撃により戦闘が開始された。4隻のヴァルカン巡洋艦と8隻の小型艇は数で劣るアンドリア艦隊に有利な状態で戦況は進み、アンドリア側の援軍は到着まで数時間かかる状況であったが連合艦隊はヴァルカンの攻撃に何とか持ちこたえた。
戦闘[]
戦闘が始まる直前、エンタープライズの指揮を執っていたチャールズ・タッカー三世中佐はヴァルカン艦隊とアンドリア艦隊の間にエンタープライズを移動させ、ヴァルカン最高司令部のヴラス長官に既にアンドリア側にヴァルカンの奇襲計画が知れていることを警告し、ヴァルカン艦隊を撤退させることを要求した。しかし、ヴラスはエンタープライズに対し戦場から退去しなければ攻撃を加えると警告した。タッカー中佐はズィンディ危機の際にアンドリアが地球を助けた恩があると撤退を拒否するとヴラスは直ちにアンドリア艦隊とエンタープライズに対する攻撃開始を命令した。
攻撃命令後直ちにヴァルカン艦隊はアンドリア艦隊に対する砲火を開いた。両陣営の狭間に位置していたエンタープライズにアンドリア艦の砲撃が命中し、直ちに射程外へと退避した。その後、アンドリア艦の一隻にヴァルカン艦の攻撃がメイン・リアクターに命中し損傷を受けたため、エンタープライズは直ちにアンドリア側に付きヴァルカン艦への攻撃を開始した。エンタープライズからヴァルカン艦へ攻撃が行われたことを知った最高司令部側は、エンタープライズの破壊命令を出した。
ヴァルカン巡洋艦は直ちにエンタープライズに対して砲撃を集中した。エンタープライズは回避行動を取りながら応戦したが、ヴァルカン艦のシールドを破れずにいた。ヴァルカン艦からの集中砲火にエンタープライズが圧倒される中、アンドリア艦のクマリはエンタープライズを援護して再びヴァルカン艦の目標をアンドリア艦へと向けさせた。
その後も続く戦闘の中でエンタープライズとクマリはヴァルカン艦からの執拗な攻撃を受け続けた。エンタープライズはヴァルカンの攻撃により魚雷発射管と操舵制御装置が破損し、Gデッキが破損し大気が漏れ出していた。しかし、突如ヴァルカン側の攻撃が止みヴァルカン艦隊は撤退して行き、戦闘は終結した。
ヴァルカンにおける陰謀の暴露と政治動乱[]
戦闘の最中、ヴァルカン最高司令部では戦闘をモニターしていた。クヴァック大臣は奇襲が失敗したことで双方に多大な犠牲が出ることが予想されるとして、直ちに攻撃を中止するようヴラスに進言したが、ヴラスは既に下した決定は覆せないとして進言を却下した。クヴァックはズィンディ超兵器の存在がアンドリア艦隊に確認できないことも挙げ攻撃中止を主張し続けたが、ヴラスは部下に命じてクヴァックに対して銃を突き付けてこれ以上の逆らえば逮捕すると脅した。
ジョナサン・アーチャーとシラナイトのトゥパウは転送で最高司令部へと侵入し、スラクの教えのオリジナル文書であるキルシャラを提示した。ヴラスはキルシャラは神話上の存在であり、アーチャーらが持ちこんだキルシャラは偽物であるとしてそれを破壊しようとするが、ヴラスは他の議員によって撃たれ、クヴァックは直ちに艦隊指揮官に攻撃中止と撤退を命令し、戦闘は中止したのであった。
余波[]
アンドリアの戦いは戦術上では中断されたため決着はつかなかったが、政治的影響は前世紀までの両国のそれまでの紛争よりも非常に大きなものとなった。
- ヴァルカン最高司令部は解体され、ヴラス長官は偽りの情報でヴァルカンによる先制攻撃を先導した罪で告発された
- 最高司令部の解体により、クヴァック大臣とトゥパウらによる新政権が樹立した
- ヴァルカン新政権とアンドリア帝国は何年も続いた軍事的緊張と冷戦を終結させ、それまでの敵対的な関係は終わりを迎えた。ヴァルカンはプジェム修道院を利用してアンドリアを監視するような敵対的な政治姿勢を改めた。また、この長年に渡る緊張関係の緩和により、後にロミュラン無人艦による動乱の際には両国は共同で作戦行動を取ることとなった。これらの動きは2155年に惑星連合が結成される際にヴァルカンとアンドリア両国がこれに加わる一つの布石となった
- ヴァルカン新政権は従来の地球政府に対する政治姿勢を大幅に改め、2063年のファースト・コンタクト以来100年近く続いた人類の高度な技術の開発の抑制や、深宇宙探査の制限姿勢を撤廃した。これは、人類の宇宙進出で大きな役割を担ったジョナサン・アーチャーの悲願の達成でもあった
- キルシャラの完全な解読まで数年かかることが予想されたが、解読が終わった後にヴァルカン社会はスラクが意図した平和で論理に根差したものへと再度改革されることとなった(詳細はIDICを参照)
- 当時は明らかとなっていなかったが、ヴァルカンによるアンドリア侵攻を影で操っていたのはロミュラン帝国であったことが後に判明する。ヴラスは密かにロミュランと共謀しており、これは後の地球・ロミュラン戦争へとつながっていった