トラクター・ビーム(Tractor beam)は、直線状に収束された重力子ビームであり、外部の物体をコントロールするために宇宙艦や宇宙ステーションに用いられる。このビームは、目標となる物体の特定の部分に空間的な負荷を作り出し、船が物体を一定の場所に固定したり、他の位置、もしくは軌道へと動かすことを可能にする。通常、トラクター・ビームは物体を照射源へと引き寄せたり、牽引するのに使われるが、逆に物体を押し返すことも可能である。(TOS: 神との対決)
トラクター・ビームは通常はワープ速度以下の速度域で使用される。ワープ速度で他の船を安全に牽引するためには、両者に余分な力が加わらないよう、牽引される側の船のエンジンを停止させる必要がある。ワープ中のトラクター・ビームの使用は、両方の船の速度が正確に一致する場合のみ可能である。(TNG: ファイナル・ミッション~新たなる旅立ち~、愛の使者)
第一連合の艦であるフェサリアスは、コンスティチューション級の艦を、船体に負荷をかけることなく長期に渡ってワープ速度で牽引することのできる艦であった。(TOS: 謎の球体) ボーグ艦も、他の艦をワープ速度で航行しながら牽引する能力を持っていた。(VOY: 生命体8472・前編)
もっとも、トラクター・ビームの強度が十分にあれば、その重力子フィールドにより、牽引される側の船の構造維持フィールドが強化され、通常ならばトラクター・フィールドによって引き起こされるストレスより船体を保護することが可能である。(DS9: ワーム・ホールから来たエイリアン)
他の船を強制的にワープ解除させる場合には、トラクター・ビーム発射の初期段階で両者の速度を一致させなければならない。これは、双方の船に多大なるリスクが伴う。だが、双方の船体が負荷に耐えるほどの強度があり、牽引する側の船が慎重にワープ・ドライブからインパルス・ドライブへの移行を行えば、トラクター・ビームを照射したまま双方の船がワープ状態から脱することは可能である。(DS9: 自然回帰)
ほとんどの連邦宇宙艦は、物体を牽引するために最適な位置であることから、船体の後部底面にトラクター・ビーム・エミッターを装備している。また、他の位置に第二のエミッターが装備されている場合もある。シャトルベイ内部には、小型のトラクター・ビームが設置されており、ドッキングや着艦の補助を行う。(TNG: 戦慄の未来)
ロミュランのトラクター・ビームによる負荷は、タイプ15・シャトルポッドのオニヅカの構造維持フィールドに顕微鏡レベルの変形をもたらし、ノーズ部分やスラスターに影響を与えた。(TNG: 裏切りの序曲)
ボーグのトラクター・ビームの技術は明らかに優れており、それが彼らを戦闘において有利にしていた。彼らはしばしば切断ビームを併用するが、彼らのトラクター・ビームに捕らえられ、防御シールドを無力化された艦の、切断ビームに対する抵抗力は無きに等しかった。また、ボーグ・キューブの巨大なサイズは、USSエンタープライズDのような大きさの艦に対しても十分に有効なトラクター・ビームのパワーを発揮することを可能としていた。(TNG: 無限の大宇宙、DS9: 聖なる神殿の謎、VOY: 生命体8472・前編)
トラクター・ビームは、うまく変調することにより、敵艦の兵器システムに影響を与えることも可能である。2372年、USSディファイアントのウォーフ少佐は、ヴォルチャ級巡洋戦艦にそのような手段で対抗することを提案。彼の案は成功し、敵艦のディスラプターの照準は狂い、その威力は50パーセントにまで低下した。(DS9: クリンゴンの暴挙)
2371年、ベラナ・トレスは、亜空間トラクター・ビームを考案。これは、通常型のトラクター・ビームを、亜空間障害にも対応させるよう改良したものである。この改良は、それまでのトラクター・ビームよりも多くのパワーを必要としたが、亜空間障害をカットすることが可能であった。(VOY: ブラックホールからの脱出)
参照[]
- トラクター・リグ
- 係留ビーム
- マルチフェイズ・トラクター・ビーム
- グラップラー