(制作視点での記事)
埋もれた文明 | |
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制作順No. | 40272-137 |
本国初放映 | 1989年3月20日、第37話 |
脚本 | スティーブ・ガーバー ベス・ウッズ |
監督 | ジョセフ・L・スカンラン |
宇宙暦/西暦 | 42609.1/2365年 |
エンタープライズは、アイコニアンの母星を発見したというUSSヤマトと合流するも、直後に、ヤマトは爆沈してしまう。ヤマトが破壊された原因を調べると共に、ピカードはアイコニア星へと向かうことを決めるが、エンタープライズの艦内でも、ヤマトと同様のシステムエラーが続発し始める。そのエンタープライズを追って、ロミュランのウォーバードもアイコニアにやってくるが・・・。
エピソード概要[]
プロローグ[]
宇宙暦42609.1、ジャン=リュック・ピカード大佐の旧友であるドナルド・バーリー大佐指揮下のUSSヤマトから要請を受けて、USSエンタープライズDは、ロミュラン中立地帯でランデブーすることになった。しかし、ヤマトの艦内では深刻なシステムエラーが発生しており、立ち往生となっていた。その影響か、ヤマトの日誌をダウンロードする際にライカー曰く「コンピューターのしゃっくり」と比喩した読み込みエラーも発生していた。データは、そのエラーの原因はヤマト側の問題だと言う。
ランデブーを果たしたヤマトと交信するが、状況はエンタープライズのクルーたちが予期していた以上に深刻さを増しており、バーリーの話によれば、シャトル格納庫のフォースフィールドが勝手に解除され、機関部のクルー18名が宇宙に投げ出されたという。
このシステムエラーの原因はバーリーやヤマトのクルーたちにもよくわかっておらず、バーリーは「すべてのシステムが申し合わせたかのように一斉にエラーを起こし始め、最新鋭のギャラクシー級にあるまじきいい加減な作りだ」と嘆くが、設計ミスかどうかもハッキリしていなかった。
中立地帯で立ち往生ともなれば、いつロミュランと出くわすかもわからないため、早くこの場を逃れようとするピカード。だが、バーリーは、わざわざ中立地帯に踏み込んだ理由を、それまで伝説の存在とされてきたアイコニアンが実在し、その本星と思わしき惑星をロミュランに知られる前に早く発見しなければならなかったためだと説明した。しかし、そこで画面が乱れたかと思えば通信が途切れ、直後に、ヤマトは大爆発を起こし、爆沈した。
この突然の出来事にエンタープライズのクルーたちは動揺し、続いてヤマトの1000名以上の命が失われたことを悲しむ暇も無くロミュランのディデリデクス級ウォーバードが姿を現した。
第一幕[]
ロミュランのウォーバード、IRWハッコーナは戦闘態勢でエンタープライズに接近してきたが、艦長であるタリス副司令官はピカードとの交信に応じ、退却するように警告した。しかし、この時点では、ハッコーナがヤマトを破壊したかどうかは定かでなく、ハッコーナにヤマトの爆沈の責任がない事がわかってから中立地帯を出ていく、とピカードはタリスに伝えて、通信を終えた。その後、ハッコーナは遮蔽装置で姿を消した。
1時間後、観察ラウンジで会議を行なうエンタープライズの上級士官たちだったが、ヤマト爆沈の原因はハッコーナが攻撃したのではなく、ヤマト自身にあった、と機関部長であるラフォージは結論を出した。
まず、ヤマトの機関室において反物質貯蔵タンクを囲む磁気遮断材が崩壊したことで、自動的にタンク内の反物質放出を始めた。しかし、この直後に反物質抑制装置が異常をきたし、反物質の放出が中途で停止。残留した反物質が正物質と融合し、大爆発を引き起こした可能性が高いという。だが、そのような自滅的なシステムエラーは通常の状況では起こるはずがないため、ヤマトが爆発したのは、極めて特殊な状況下であったことを、ラフォージは説明した。その原因の一つとして考えられたのは、死亡する直前のバーリーが言及した、設計ミスの可能性だった。ピカードはラフォージら機関部のクルーたちに命じて、原因の徹底調査に当たらせた。
また、カウンセラーのディアナ・トロイは、ヤマト爆発の原因がロミュランにない以上は、中立地帯を去るのは得策ではないことをピカードに助言する。
艦長待機室に戻ったピカードは、ヤマトが爆沈する前にダウンロードできたバーリー大佐の艦長日誌から、「ロミュラン」、もしくは「アイコニア」の単語が記録に含まれている日誌を再生させた。
最初に再生されたのは宇宙暦42592.72の記録であり、ディニアス3号星におけるラムゼイ博士らの考古学発掘調査に関するものであった。
この時、バーリーはアイコニアンの発掘品を手に持っていたが、その発掘品の正体がわからずに戸惑っていた、とも記録があった。
その後の調査により、その発掘品が20万年間の恒星間漂流を考慮した結果、アイコニアの本星を発見したことなどを記録し、ロミュランの中立地帯へ入ることに反抗的な副長や、ロミュラン艦とのいざこざなどの紆余曲折を経て、アイコニアに到達したことなどが記録されていた。また、アイコニアの人工衛星とも遭遇するが、その後に発生したシステムエラーにより、上陸班を送れず、目標を目の前にして詳細な調査もできなかったという。
そして、もしもヤマトのシステムエラーが直らない場合は、ランデブーしたエンタープライズに、この調査を引き継いでもらいたい旨を記録し、そこで、個人日誌の再生が終わった。
それらの記録を目にしたピカードは、バーリーとヤマトのクルーたちの意思を継ぐことを決め、エンタープライズを、ワープ8でアイコニアに向かわせた。
第二幕[]
ウェスリー・クラッシャーは、待機室のピカードのもとへ足を運び、アイコニアの実在を信じられなかったという。それに対して、ピカードは「中国もマルコ・ポーロが訪れるまでは伝説だと思われていたが実在した」と答え、さらに、「この星域のとある3つの恒星系には、非常に似通った文明が存在し、その大元はアイコニアだと言われている」と説明した。植民したか、征服したのかは定かではないものの、ウェスリーが自分の元に訪れた本当の理由が、ただアイコニアの存在の是非を問うためではないだろうと指摘した。
すると、ウェスリーはヤマトの大爆発を目前とし、大勢の命が失われた状況に動揺しており、何故、ピカードやライカー、ラフォージらが冷静でいられたのかがわからなかった、という。ピカードは、「冷静に見えたのは訓練の賜物だ」と答えるが、一方で、「人の死に遭うことは、何度見ても辛いものだ」と告白した。その直後にピカードはレプリケーターに注文したアールグレイ・ティーのカップを手に取るが、出てきたのは、紅茶ではなく、花だった。
ピカードの嫌な予感は的中し、エンタープライズにもヤマトと同じようなシステム異常が頻発するようになった。規模こそ小さいが、ヤマトと同じ末路を辿りかねないと憂慮されていた。
その最中、ラフォージはギャラクシー級やヤマト、エンタープライズの構造図から、設計ミスが見つからなかったことを発見する。そして、日誌を辿る限り、最も怪しいのがアイコニアの人工衛星との接触であることを推測するも、その人工衛星と接触もしていない状態でエンタープライズ内で異常が起きていることの説明がつかなかった。
エンタープライズはその後すぐにアイコニア星の軌道に入るが、アイコニアの地表は約20万年前に大規模な爆撃を受けたことで廃墟と化していた。だが、アイコニアの主要都市と思われる場所から、自動的に人工衛星が打ち上げられてきた。ピカードはそれを回収することをラフォージに告げるが、直後に、ラフォージはヤマト爆発の原因を突き止め、ピカードに警告を試みるも、艦内通信システムがダウンした。
ラフォージは廊下を走り、大急ぎで近くのターボリフトに到着するが、ターボリフト内の慣性制御装置が故障しており、ラフォージは、リフト内で右左、前後、上下に体を振り回された。ウォーフが人工衛星をトラクタービームで捕獲しようとする寸前でラフォージはブリッジに辿りつき、衛星の破壊を進言した。ピカードはすぐに人工衛星をフェイザーで破壊させた。間一髪で辿りついたラフォージは「あの人工衛星と接触していたら、それこそ取り返しのつかないことになっていた」と話した。
第三幕[]
ラフォージは、アイコニアの人工衛星の正体は、アイコニアのプログラムの発信機であったことを突き止めた。そのプログラムは、ヤマトからダウンロードしたファイルと共にエンタープライズのコンピューターにも入り込んでおり、艦内のソフトを書き換えようとして、本来のソフトと対立を起こしていた。これがシステム異常の原因であった。
このアイコニアのプログラムは非常に高度であり、エンタープライズに侵入して、わずか7時間で艦のシステムを学習し終えただけでなく、本来あるプログラムを書き換え始めていた。厄介なことに、これはラフォージたちエンタープライズの熟練の機関部員やシステムエンジニアたちにも手に負えない代物であった。
一方、被害がヤマトほど酷くないのは、ヤマトの場合は、人工衛星から直接全システムにプログラムが流入されてきたが、エンタープライズの場合は、そのプログラムがメインフレームの一部に留まっていたためである。それを閉じ込めたままでいられれば時間を稼げるが、コンピューターにも人間と同じく「随意」と「不随意」のシステムがあり、今回のトラブルはその内90%の不随意の部分に該当するため、コントロールできない状態であるとラフォージは言う[1]。
また、ライカーはこのシステム異常によって怪我人の報告が増えており、ラフォージが遭遇した例もあって、ドクターキャサリン・ポラスキーはターボリフト[2]の使用を禁止にしたのだ。だが、そのために35件の負傷者報告[3]がポラスキーの元に寄せられても、医療部員だけでは数が足りない上に、バイオベッドや接合器などの医療機器もプログラムの影響で作動しなくなり始めていた。
機関室ではデータとラフォージがアイコニアのプログラムをメインフレームの一部に閉じ込めようと作業を行なっていたが、コンソールを操作していたラフォージは感電し、データに引きはがされる形で助けられた。
デッキ7の生命維持装置は停止し、プログラムの書き換えに太刀打ちできず、このままではアイコニアに滅ぼされてしまうことを警告するライカーであったが、その段階に行く前に、ヤマトと同じく大爆発を起こすことがピカードにはわかっていた。そこで、人工衛星を自動で打ち上げていた基地を調べることを考えたが、今回は、ライカーではなく、ピカードが直接上陸班の指揮を執ることになり、データとウォーフが共にアイコニア星へ転送降下した。
その直後にハッコーナがエンタープライズの眼前で遮蔽装置を解除し、戦闘態勢に入ってきた。エンタープライズは防御スクリーンが作動せず、光子魚雷で狙われた。だが、何故か、ハッコーナは攻撃してこなかった。
直後に防御スクリーンが復旧するが、突然消え、また復旧、という状態が繰り返された。エンタープライズは武器が使えなくなり、ハッコーナも魚雷の準備と解除を繰り返していることを戦術士官のウィリアムズ少尉が報告する。
状況がつかめないため、ライカーはタリスと交信するが、タリスはエンタープライズに中立地帯を去れ、と警告し、アイコニア星はロミュランのものだ、と主張する。その主張に異を唱えるライカーだったが、一時的に通信が途切れたかと思えば、ハッコーナが、突然遮蔽し始め、また元に戻り、そこで通信が回復する。お互いにシステムの異常を抱えていることからライカーは休戦を申し出るも、直後に、アイコニアの人工衛星が発射され、ハッコーナに迫ってきた。ライカーに警告されたタリスは、通信を切り、人工衛星を破壊した。
ディアナは、明らかに礼を言う暇もないほどにタリスが動揺していたと伝え、ウェスリーは、ハッコーナまでシステムに異常を来たしていることを疑問に思った。
ライカーは、ハッコーナがヤマトの日誌を傍受し、そこから艦のコンピューターにアイコニアのプログラムが侵入したのだろう、と推測した。万が一の攻撃に備え、ライカーは非常態勢の維持を命令するも、ウェスリーは防御スクリーンが作動したままでは、上陸班を収容できなくなることを報告する・・・。
第四幕[]
軌道上のエンタープライズ内ではクルーたちの緊張が高まっており、それをディアナも感じていた。クルーたちに仕事を与えるため、ライカーは避難準備の指揮をディアナに命じた。
惑星アイコニアに上陸したピカードたちは、すでに星は死滅していて、人の気配がないことを確認する。だが、人工衛星の発射基地と思われる司令センターは荒らされずに残っていた。
ウォーフはエンタープライズを呼び続けるも応答がない。データとピカードは、発射基地のコンソールの文字を調べるが、アイコニアの文字は、ディニアス語、ディーワン語、イコバー語とも似ていることから、ピカードはそれら3つの言語がすべてアイコニア語から派生したものであると推考する。ピカードはデータにそれら3つの言語の単語比較表を作り、共通点を見つけるように命令した。
そして、データはそのピカードの仮説が正しかったことを突き止め、基地の機能を停止しようとコンソールを操作するも、代わりに彼は、ゲートウェイを作動させてしまう。
しかし、その誤作動が、アイコニアの伝説をさらに裏付けた。ウォーフの指摘するように、ゲートウェイの向こう側の景色はアイコニア星ではないことから、ピカードはゲートウェイを目にして、「彼ら(アイコニア人)は何光年もの距離を、簡単に、銀河系の端から端までを、まるで部屋を横切る感覚で旅をしていた。となると、アイコニア人は死滅していないかもしれない」と、新たな仮説を言及した。
その上で、いつでもこの地に戻ってこられるように防衛技術を残していったことから、ウォーフは、その仮説が正しいとすれば、打ち上げられた人工衛星は何らかの武器だったのではないか、と仮定する。しかし、データはその仮定に異を唱え、発射基地自体に、軍事司令部となり得るような要素が見られず、せいぜい転送室程度である、と言う。
ウォーフはヤマトを爆発させた原因が人工衛星の放ったプログラムにあり、アイコニア人が征服民族であったことから反論するが、ピカードもデータの意見に同意し、決断を早まったと認め、人工衛星は武器ではなく、アイコニア人なりの友好の証であったが、それが偶然我々には悪い方向に作用したのかもしれず、アイコニア人が征服民族であるという伝説も、アイコニアの科学力を脅威と感じた敵が広めたものかもしれない、と推測した。
そして、等間隔でゲートウェイの出口が移動する中、一瞬、ゲートウェイの出口にエンタープライズのブリッジが見えたため、帰還するチャンスに希望が見えてきた。
だが、データがコンソールを操作しようとした時、感電し、アイコニアのプログラムがデータの中にまで入り込んでしまう。
第五幕[]
機能停止寸前の状態に陥るデータに、ピカードは発射基地をどう破壊すればいいのかを聞き出し、さらに、ウォーフにトリコーダーを破壊するように命じた。その情報とアイコニアの技術がロミュランの手に渡らぬよう、トリコーダーと発射基地、ゲートウェイを破壊しなければならなかったのである。
発射基地の地下には莫大な量のエネルギーが存在し、基地を破壊するには、衛星を打ち上げる際に発射サイロのドアを封鎖し、圧力をかける。その圧力の解放によって、発射基地は破壊されることになるのだ。
ピカードは、データとウォーフを先にエンタープライズに帰還させ、彼らが戻った後に、発射基地の破壊を始める旨を伝えた。
ウォーフとデータはエンタープライズに無事帰還し、データを機関室に連れて行った。
だが、データはアイコニアのプログラムに犯されており、機能停止に陥った。しかし、数分後、データは意識を回復した。ライカーはラフォージにその要因となったことを尋ねるが、ラフォージは、それが一度機能を全て停止させることによって、対立するソフトを消し、その後、自己修復機能で作動エラーを訂正したという結論を出した。同じことをエンタープライズに施せば、ヤマトの日誌と、それ以降に入力された情報は消えることになるが、後は、艦のメインフレームを入力しなおすことで、アイコニアのプログラムと、その影響が消えてなくなるのである。それを行なうには自分たちに武器を向けているロミュラン艦の目の前で無防備を晒すことになるが、そのリスクを承知で、ライカーはシステムの完全な機能停止を実施する。
一方で、ピカードは基地の爆破を実施する。
だが、エンタープライズへ続く入口が現れる前に爆発が激しさを増したため、ピカードは自爆装置が作動したハッコーナのブリッジに通じる入口に飛び込む他なかった。
その突然の出現にロミュラン人たちは驚き、タリスはピカードを捕えようとするが、一方でエンタープライズのシステムは正常に戻り、転送装置の機能も復旧。ピカードはハッコーナの防御スクリーンが消えていたため、オブライエンに転送収容されて事なきを得る。
ピカードはハッコーナがもうじき自爆するため全速での退避を命じようとするが、ライカーはその前に、エンタープライズのシステムを正常化させた方法をタリスに教えるため、ロミュラン艦と交信する。
そして、それによってハッコーナもシステムの異常がなくなり、エンタープライズ共々、アイコニアの軌道から無事に去ることが出来た。
付録[]
背景[]
このストーリーの原案は脚本家のスティーブ・ガーバーとベス・ウッズによるものであり、インターネットが普及していなかった1989年当時としては世間一般では珍しかった「コンピューターウィルス」を題材とした作品である(原題をそのまま翻訳すれば「感染」という意味になる)。
ちなみに、脚本家両名の名前は、スタッフのお遊びながらUSSヤマトのクルーの名前として登場している。
また、今作では後々にピカードの代名詞ともなる"Tea. Earl Grey. Hot."(日本語版では、「アールグレイ(ティー)、ホット」)のセリフが初めて使われた。
注釈[]
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