宇宙翻訳機(universal translator、略称 "U.T.")はtranslator circuitや万能翻訳機、単に翻訳機とも呼ばれる。宇宙翻訳機は異星人の言語を解読し使用者の言語に翻訳する。(ENT: 死のファースト・コンタクト、転送空間の恐怖、TNG: 神に似た人々)
原理[]
全ての知的生命体には共通の思考や概念がある。宇宙翻訳機は脳波の振動パターンを比較して対象の思考を選択し、必要な文法を提供する。翻訳機が話す声は、認識した対象のアイデンティティ概念に対応する声または近似的な声である。(TOS: 華麗なる変身)
未知の言語を話す相手と対面遭遇した場合には相手に言葉を話させることによって宇宙翻訳機にデータを集め、翻訳機が翻訳マトリックスを形成すると翻訳が可能になる。(スタートレック:エンタープライズ、DS9: さまよえるスクリーア星人)
開発史[]
地球では翻訳マトリックスが2067年には既に作られており、探査機フレンドシップ1に含まれていた。(VOY: 終焉の星)
宇宙翻訳機は2151年より少し前に開発されたがエンタープライズ(NX-01)の発進時にはまだ実験段階だった。(ENT: 夢への旅立ち) この時点の宇宙翻訳機は比較的短い時間で翻訳が出来たが、対面してのコミュニケーションや宇宙任務、特にその場でコントロール・パネルやハッチ、ディスプレイの異星人言語を読むような状況ではエンタープライズのホシ・サトウのような言語学の能力を持った人物が必要だった。(ENT: 名誉に生きる者、漂流生命体の叫び)
2160年代後期、ホシ・サトウは未知の言語に対しての翻訳を高速化するための言語コードを開発した。(ENT: 暗黒の地球帝国・後編)
形状[]
2150年代、エンタープライズ(NX-01)の船外任務で未知の言語を読み聞きするのに使われたのは片手に持てるサイズの翻訳機だった。キーパッドと画面がついており、先端にコミュニケーターを装着して使用した。(ENT: 眠る女の謎、突然変異) 既知の言語に対しては、あらかじめプログラムしておくことでコミュニケーターのみでも翻訳が可能だった。(ENT: 狙われた星アカーリ)
2155年には翻訳機は小型化して衣服に取り付けられる程になり個人が対面してコミュニケーションを行えるようになった。(ENT: テラ・プライム・前編)
2267年、クラスF・シャトルクラフトの宇宙翻訳機は杖のような形状だった。(TOS: 華麗なる変身)
24世紀には宇宙翻訳機技術は発展し宇宙艦隊の個人が着けるコムバッジに組み込まれていた。(VOY: ミッシング1937)
能力[]
2267年、USSエンタープライズ(NCC-1701)のジェイムズ・T・カーク大佐はガンマ・カナリス領域でコンパニオンとして知られるエイリアンと翻訳機を用いて交流を図った。宇宙翻訳機は脳波パターンからアイデンティティの一面を見つけ女性の声で話した為コンパニオンは女性である事が明らかになった。(TOS: 華麗なる変身)
宇宙翻訳機は2366年初頭にウェスリー・クラッシャーが作ったナナイトの2進法言語も翻訳が可能であった。(TNG: 進化の刻印)
宇宙翻訳機は時々機能しない事があり、翻訳機はタマリアンの言語を英語に翻訳する事が出来たがタマリアンの話し方は比喩表現を用いておりそれを簡単に理解出来る言葉に翻訳する事は出来なかった。同様にドミニオン語の様々な他動詞のニュアンスを翻訳出来なかった。(TNG: 謎のタマリアン星人、DS9: 封じられた最終戦略)
他の言語ではスクリーアの言語も翻訳機は解読に支障があり翻訳体系が作られるまでの数時間は言語を記録して分析する必要があった。(DS9: さまよえるスクリーア星人)
宇宙翻訳機の能力はヒューマノイドの脳波を読み取って翻訳することに焦点が当てられているため、ベラナ・トレスに取り付いた細胞質型生命体のような全くの非ヒューマノイドでは翻訳機は完全に阻害され翻訳出来ない。(VOY: 寄生生命体の恐怖) 同様の理由から宇宙翻訳機は外国語を話すホロデッキの登場人物の言葉は翻訳出来ない。キャスリン・ジェインウェイはホロデッキでラテン語を使って告訴する彼女の言葉を理解出来なかった。(VOY: バイオ神経回路) しかし、エンタープライズ(NX-01)が2152年に遭遇した共生生命体に対してはサトウ少尉の尽力で多少の威力を発揮した。(ENT: 漂流生命体の叫び)
ニーリックスがキセノン・ベース生命体と交渉している間に一度宇宙翻訳機が停止したのでアートゥリスが異星人の言葉を翻訳して彼を困惑から助けた。(VOY: 裏切られたメッセージ)
宇宙船同士の通信で宇宙翻訳機を使用すると、翻訳機の使用が検知される。そのため23世紀の宇宙暦9522から9529の間、チェコフ中佐とウフーラ中佐はクリンゴン領との境界を隠れて越えるために紙の辞書を使って大昔の手動で翻訳する方法に戻っての会話を強いられた。ウフーラは非常に砕けたクリンゴンを装い、USSエンタープライズ(NCC-1701-A)をルラ・ペンテに物資を届ける輸送船ヴルスヴァだと偽る事に成功した。(スタートレック6:未知の世界)
宇宙艦隊以外の宇宙翻訳機[]
22世紀、フェレンギの翻訳機は手に持つ大きさの装置だった。(ENT: 獲物たちの罠) その後小型化し耳の中に着けるようになったが、この後のモデルは核分裂による放射線で簡単に故障した。(DS9: フェレンギ人囚わる)
カーデシアの宇宙翻訳機でブリーンの言語を翻訳するには手動で調整する必要があった。(DS9: 決別の行方)
関連項目[]
- 言語コード
- 言語学データベース
- 記録翻訳装置
- 翻訳アルゴリズム
- 翻訳マトリックス
背景[]
宇宙翻訳機は物語を進めやすくしているお約束として存在する多くのスタートレック技術の一つである。宇宙翻訳機のおかげで登場人物同士のセリフの大部分は英語で書かれたり会話されたりすることが出来る。これは視聴者や作家にとって便利なことである。作家は毎週登場する異星人毎に新しい言語を発明する必要がなく、視聴者も字幕を読まないで済む。
もう一つのお約束としては非英語話者があたかも英語を話しているように見える(唇の動きが英語の発音と合っている)ことである。これは特に、宇宙翻訳機がオフになっている状況が描かれる『DS9: フェレンギ人囚わる』、『ENT: 狙われた星アカーリ』、『ENT: 獲物の罠』および『ENT: 眠る女の謎』を見れば理解しやすい。もし本当に翻訳機があったら、映画の吹き替え版を見ているような見た目になるはずである。
試案『Star Trek is...』はこの構想について次のように述べている。
- 「我々はシリーズの初期に『テレコミュニケーター』を確立する。これはポケットに入れて持ち運べるトランジスタラジオを少し複雑にした『双方向変換機(two-way scrambler)』で、あらゆる言語を英語へと変換するようである」(Roddenberry 11)
『TOS: 謎の球体』(パイロット版『TOS: 歪んだ楽園』、『TOS: 光るめだま』に続く最初のレギュラーエピソード)が執筆中に、宇宙翻訳機はさらなる発展を遂げた。作家のジェリー・ソールが後で説明したことには、「元々はクルー一人一人にポケベルのような感じで手首につける言語翻訳機を持たせ、宇宙のどこにいたとしても考えていることが自動的に英語に翻訳されるというつもりだった。我々はこの案を却下して、皆が本当に英語を喋っているということにした。」(The Star Trek Interview Book, pp. 127-128)