(制作視点での記事)
魔の宇宙病 | |
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制作順No. | 6149-07 |
本国初放映 | 1966年9月29日、第4話 |
脚本 | ジョン・D・F・ブラック |
監督 | マーク・ダニエルズ |
宇宙暦/西暦 | 1704.2/2266年 |
エンタープライズの乗組員は心理的抵抗を取り除く感染に酔っぱらっていた。
エピソード概要[]
プロローグ[]
エンタープライズは惑星の迫りくる崩壊を観察する為に大昔の地球と似た惑星サイ2000を回る軌道に乗っていた。スポック中佐とトーモレン中尉は防護服を纏い、地上にある凍り付いた実験室に転送し、部屋に死体が散乱していた科学班の死因を捜査し始めていた。事件現場を捜査する間、トーモレンは鼻を掻くためにうっかり手袋を取り、気づかずに手に飛び込んだ不思議な液体に晒された。
第一幕[]
上陸班はエンタープライズへ戻り、転送台で浄化処理を受け、その後、ドクター・マッコイに診断と健康証明も受けた。初めに地上の修羅場に影響を受けなかったのに、診断の間、トーモレンは突然にトラウマに悩まされている徴候を示し始めていた。カークは休養を命令した。
地上で集めたデータを検討した上で、カークと上級士官たちは科学班が狂気のせいで殺しあったと結論を下した。しかし、この狂気の原因は不明だった。惑星の崩壊作用を細かく観察する為に周回軌道をギリギリまで低くしなければならない。乗組員の業績について心配していたカークは地上に起こった事件がエンタープライズでも発生する危険を問いた。 スポックは探査技術の限界のせいで事件の原因を確かめられないかもしれないと認めたが、スコットはエンジンが十分に強く、乗組員が正気を失わない限りに軌道から外さないようにできると断言した。惑星の崩壊の初期段階が既に始まっていた。
会食室では、トーモレンは汗が盛んに出ながら、惑星の地上で不思議な液体に晒された手を掻いていた。陽気にしゃべっていたスールー大尉とライリー大尉も会食室に入り、スールーはフェンシングの長所について話し、趣味として始めるようにライリーを説得しようとしていた。会話に引き入れようとされると、トーモレンはヒステリーになった。食卓用ナイフを振り持つながら、トーモレンは宇宙で生活していこうとするのは愚挙なことだとがなっていた。絶望に陥ったトーモレンは自分にナイフを向けていた。スールーとライリーはトーモレンからナイフを奪い取ろうとしたが、トーモレンは転び自分を突き刺した。
第二幕[]
マッコイとナース・チャペルは浅い傷だけあったトーモレンの命を救えなかったことに当惑し、マッコイはトーモレンが生きる意志を無くしたそうだとしか考えられなかった。
惑星サイ2000の崩壊が早まる間、エンタープライズでの秩序も崩壊してきた。ブリッジでは、感染の徴候が現れていたスールーとライリーはなかなか軌道を修正していなかった。フェンシングを練習するためにスールーはやがて操舵コンソールの持ち場を離れた。ライリーは、船長席に座っていたスポックに派手に反抗的な態度を取り、誇大なアイルランドなまりで話していた。スポックの命令でライリーは医療室へ出頭した、しかし、チャペルといちゃつこうとしながら、チャペルに伝染する。同時に、自分を17世紀フランスの銃士だと思い込んだスールーはシャツを着ずに全デッキを歩きまわり、フェンシング用のフォイル(剣)で見かけた乗組員たちを追い払っていた。妄想に一層深くふけたスールーはブリッジに戻り、「お守り申す」と言いながらウフーラをぐいと掴んだ。しかし、スポックはヴァルカン首つかみでスールーを気絶させた。
丁度その時、エンタープライズの軌道が下がっていると示すブザーが鳴り始め、カークがエンジンルームに呼びかけると、スコットでなくライリーが応答していた。ライリーはスコットと他の乗組員をエンジンルームから締め出させ、そこで全デッキに新しい船長として指揮を執ったりアイスクリーム糧食を倍にしたりといった宣言を放送していた。スポックはエンジンから動力が復旧されなくてはエンタープライズが20分以内大気圏に入り、燃え尽きると推定した。
第三幕[]
エンタープライズを巡視していたスポックはスコットが早めにエンジンルームを奪い返すように促した。その後、マッコイが謎の宇宙病の医療法を発見する進展を確認しに行くとスポックはチャペルと遭遇した。宇宙病の影響を受けたチャペルはスポックへの愛を厚かましく告白し、スポックの素手を触ることでスポックに感染を移した。はっきり分かるほど悩んでいたスポックがブリッジからの呼びかけを無視しながらデッキの廊下を歩き回っていた。ブリーフィングルームに引きこもったら、自分に「感情を圧政できる」と再三主張していたが、スポックは平静さを失い、抑えきれずに泣き始めていた。
エンジンルームを成功に奪い返したのに、スコットはライリーがエンジンを完全に止めたと発見し、標準の再始動が30分間かかるとカークに報告した。ところが、もう大気圏に突入しているエンタープライズが燃え尽きることまで8分しかない。
第四幕[]
物質と反物質を冷えたままエンジンのバランスを取って制御爆縮の状態で始動するのは理論的に可能だが、スポックの科学的専門知識が必要になる。その間、マッコイは宇宙病の治療法を発見した。
カークは 自分の母親にも愛情を示せないという呵責に苦しんでいたスポックを見つけた。カークは宇宙病から抜け出させるようにスポックの頬を叩くと、スポックはカークへの友情も恥と思っていると認めた。カークに再び叩かれたら、スポックは同じやり方で返事し、テーブルを飛び越えさせるほどカークを叩いた。
スポックとの殴り合いのせいで宇宙病にかかったと気がついたカークは愛などない方がいいと躊躇した口調でスポックに言い、そして、エンタープライズへの愛とその愛の代償について熱狂的に語り始めていた。カークは突然にランド秘書への憧れがあると叫んだ。ふと正気に返り、スポックはスコットがエンジンを再始動するのを手伝いに行った。まだ宇宙病の影響を受けたカークはあらん限りの力を奪い起し、エンタープライズに「守ってみせるぞ、君を」とささやきながら、ブリッジへ向かった。
船長席に座ったカークの命令はおぼつかなかったが、治ったスールーは脱出コースをセットできた。スポックとスコットがエンジンを準備するのを待っている間、カークは隣に立っていたランド秘書に振り向いて、躊躇してランドの方に手を伸ばした、しかし、本分を思い出したカークは手を悲しげに下げた。準備を完了したところで、エンジンが始動された。制御爆縮は成功したが、予期せぬ結果が起こり、エンタープライズは3日前に戻った。カークは惑星サイ2000へ再び行かないことにし、ワープ1で前進するよう命じた。
日誌エントリ[]
- 『航星日誌。我々は今、惑星サイ2000の周回軌道にある。かつて栄光の文明に栄えたこの星は、今や凍りついて滅びようとしているのだ。星の崩壊作用の観察に来ている科学班を収容するのが、我々の任務である。』
- 『航星日誌、宇宙暦 1704.2。収容する予定の科学班は全員死亡し、生命維持装置のスイッチが切られていた。我々には理解できない不思議な状態である。このため私は当分軌道に留まり、この星の崩壊作用を観察することを決意した。』
- 『航星日誌、補足。軌道は次第に低くなり、一刻の油断も許されなくなってきた。だがこの時不思議な病が密かに、エンタープライズの中に広がり始めたのだ。』
- 『航星日誌、宇宙暦 1704.4。エンタープライズはコントロールを失い、惑星サイ2000 に向かって落ちていく。このままでは後 19分で我々の命も終わりだ。』
- 『航星日誌、補足。エンタープライズはついに惑星の大気圏に突入した。船の内部は摩擦のため、急速に熱を帯びていく。』
記憶に残る言葉[]
"脈拍は242と桁外れだが、血圧は全然ないと言っていいくらいだねえ。君の身体には、青い血が流れているとしか思えんよ、これでは。"
"私の脈と血圧はそれで普通なんです。身体の組織は、あなたたちと違っているのが私の自慢ですよ。"
- - マッコイとスポック、診断中
"宇宙には、未知のものがあふれてて当然だ。"
- - スポック、カークに
"離せ!お前は、上位じゃないし、とんがり耳もないだろ!俺の首から手を離せ!"
- - トーモレン、スールーに
"オ・ライリーがいる限り心配は無用じゃ。わしみたいアイルランド人の一人はお前たちの一万人の価値と同じじゃ。"
- - ライリー、スポックに解任された前
"ジョーの誤りは何か分かるだろ。アイルランド人として生まれなかったんだからさ。"
- - ライリー、トーモレンの死について
"美しい乙女様、私がお守り申す。"
"すまんね。私はどっちでもない。"
(原語の"fair maiden"(美しい乙女)の"fair"とは、「(皮膚が)色白」、や「純」、「やさしい」等の意味もある。つまり、ウフーラは「私は色白な/純な/やさしい人も、処女でもない。」というしゃれを言っていた)
- - ブリッジの乗組員をフォイルで恐喝していたスールーとウフーラ
"いつか、その技を教えてほしい。"
(吹き替え:「君に借りができたようだな。」日本語字幕:「いい技だ。」)
"ダルタニアンを診療室へ運べ。"
(「ダルタニアン」とはデュマ作の「三銃士」の主人公)
- - カークとスポック、スポックがヴァルカン首つかみをした後
"誰だ?"
"わしはエンタープライズのケビン・トマス・ライリー船長だ。そちらは誰じゃ?"
- - カークとライリー、ライリーがエンジンルームを乗っ取った後
"あなたに愛してるの。人間とヴァルカン人のあなた。"
(吹き替え:「あなた、私と同じ地球人ね。ヴァルカンの血が流れても。」)
- - チャペル, スポックに
"私には物理の法則まで変えられませんよ。どうしても30分いります。"
- - スコット、エンジンの再始動を巡り
"水だ、惑星の水が変化して超高分子になったのが原因だ...だから人体の発汗作用を通じて移っていったんだ。そして血液に入るとアルコールのように、自制心や判断力を鈍らせてしまう。"
- -マッコイ、感染の原因について
"この船は...私の全てを、奪うんだ。私は全てを捨てて、尽くさなければならない。"
- - カーク、スポックに
"抱きしめて...海辺をさまよい、全てを忘れて彼女を愛してみたい。"
- - カーク、ランド秘書について
"ここには海辺はないな?"
- - ランドを憧れの目で見ているカーク
"今の公式を使えば―時間を遡って、どの惑星にも、どの時代にも行けます。"
"いつか試そう。"
- - スポックとカーク、時間旅行について
背景[]
リマスター版[]
リマスター版では特に惑星の姿や地上の科学ステーションの場面が新しくなった。超速度のタイム・ワープと、スールーのクロノメーターの場面も、新たにCGで加えられた。新しいクロノメーターは宇宙暦と24時間制の時刻を示している。
ミスの例としてマイケル・オクダが引用していた有名な場面もリマスター版では直された。スコッティのフェイザーからビームが出ていないというものだが、ついにビームは合成された。
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