Memory Alpha
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J・J・エイブラムス がスタートレックの新作映画とその成果、狙いを話します。

多分、人生で一番忙しい日に(「スター・トレック」の公開初日だったので)、J・J・エイブラムスは休憩時間に私達 Memory Alpha と Wikia の皆のため、10 の質問に丁寧な答えをしてくれました。




過去の作品をリメイクする時には、新規ファンの取り込みを図るため、得てして既存のファンは蔑ろにされる傾向があります。あなたはこの映画でそれにどう対処したのでしょうか。 Henshin86

J・J・エイブラムス : 何をしなくちゃいけなかったかというと、自分たち自身では新しいものを創りたいと望んでいるのと同時に、これまで続いてきていることを受け入れて守る必要があったということだったんだ。元々スタートレックの世界を知らなくて愛していたって訳じゃなかったから、僕は監督として、楽しい映画が好きだけど必ずしもスタートレックの正典に通じているって訳じゃない自分みたいな人のための映画を撮ることにしたんだ。でも、脚本家の二人はどっちもかなりの「スタートレック」ファンだからね。一人はコアなファンだよ。だから僕は安心でしっかりした基礎の上にいるって知ってたんだ。撮影前に皆で下準備をしたよ。


長大な ST の正典は映画制作の助けになりましたか。それとも邪魔になったのでしょうか。 31dot

そう、いろいろな条件を教えてくれてとっても役立ったよ。どんな枠組みの中で創造し、探検し、試さなくちゃいけないかを知ったんだ。枠を与えられるって事は実は素晴らしいことなんだ‥‥‥どういう事ならしてもいいかっていう条件が決まっているってことは、その範囲内ならどんな危険なことでもやれるってことだからだよ。


「トワイライト・ゾーン」「X-ファイル」のような地球から離れないシリーズに対する情熱はこの映画での仕事に影響したのでしょうか。もし影響したのであればどのようにでしょうか。 Defiant

やりがいのある撮影だった、というのは、SF/ファンタジーとして自然な映画になるようにとてもおかしな決断が必要だったからさ。袖の下に隠しているトリックは全部使ったよ。こういうもので興味を引かれて影響されたもの全部を含めてさ。自分の持てるもの全てを使ったってことに気付いたんだ、たとえそれが質問した人が気に入るものではないとしてもね。「トワイライトゾーン」はあんまり影響してないな。むしろアレックスやボブと一緒に作っていた "Fringe"[1] の時に影響したかな。この映画のために、まずはオリジナルの「スタートレック」シリーズでどんなテクニックが使われているかをみて、それを主な判断基準におき、そこから出発することで新しい何かを作ろうとしたのさ。確かに僕はそこで使われているスタイルとテクニックに頷いたってことがあったんだ。本当に魅力的だったところはこの映画でも試してみたよ。


レナード・ニモイを演技指導するのはどうでしたか。長い間そのキャラクターを演じているのであなたが与えるどんな指示でも行ったことがあり、それぞれの場面でそのキャラクターならどうするはずかが判っているというのは。 Jonzam

漫画的なキャラクターだと思われないこととオリジナルを演じた俳優の真似だと感じさせないことは本当に重要だと考えてる。僕と俳優は、オリジナルの演技を認めた上で、何がそのキャラクター本来のものなのか、オリジナル俳優の演技や癖に引きずられないように僕ら自身が何をすればいいのかを話しあった。それは綱渡りみたいなもので、既存のシリーズの一部だってことなんだよね。奇怪な仕事だよ、レナード・ニモイにスポック、というのは僕らが知っているスポックだけど、を演じさせて、若いザッカリー・クイントにももうちょっとロックンロールなスポック‥‥‥もう少し自分のものとしてのスポック、をやらせる必要があったっていうのは。でもその怪しい橋は作られないといけないものなんだ。これはこの映画が持つ重荷の部類かな。これまでのファンじゃなくてより多くの新しいファンのためには新しいエネルギーと新しい態度が必要なんだ。


この映画ではタイムトラベルが関係しているということですが、もし時間を戻ってこの映画を一ヶ所変えられるとしたら何か変えたい所はありますか。 JerryJoe216

いいツッコミだね。本当は無数の小さな点があると思う。変えたいもののうち一つだけ選ぶっていうのは難しいよ。映画を見るときは小さな点全部を見るからね。「ああもうっ、もっとうまくできたのに」とか「こりゃダメだ」とか思うよ。他人が信じられないくらい自分のやった仕事を誇りに思っているんだけど、それでもいつもそういうところを見付けるんだ。どれか一ヶ所だけって訳じゃなくこう思う、「だって、その時はこうする代わりにそうしなきゃって思ったんだ‥‥‥こうしなけりゃならなかったし、ああしなけりゃならなかったんだ。」ってね。


オリジナルシリーズのキャラクターの何があなたを一番ひきつけるのだと思いますか。 Anakin138

最初は、誰とも実際のつながりがあるって訳じゃないから好きなキャラクターはいなかったんだ。今は全員が好きだから答え辛い質問だな。僕にとってカークとスポックっていうのは二人で一つのキャラクターだよ。互いにまったく異なっていて違っている、でも一緒になったらなんでも出来るチームなんだ。面白いよね。

一番正直な答えとしては「エンタープライズ」だろうね、船というのが ST シリーズでも、そもそもの船員用語としても女性扱いされているという意味でも。「彼女」は映画に出てくる登場人物の一人なのさ。それぞれが異なる登場人物が一致団結して「エンタープライズ」の家族になっているのが判ると思う。そう、この船が皆を互いにまとめるという意味では船の全体が一番重要なキャラクターなんだ。


『スタートレック:ディープ・スペース・ナイン』や『スタートレック:ヴォイジャー』と較べた時、オリジナルシリーズ時代の映画を撮ろうとあなたに決めさせた原因は何でしょう、そしてこれがもしうまくいったら今後シリーズを続けるつもりはありますか。 Morder

「スタートレック」の大ファンでなかった誰かとしては、これは多分僕が監督する最後の映画になるんだと思った。でも脚本家やプロデューサーと一緒に話に取り組んでいくうちにストーリーやキャラクターやアクションなんかにわくわくしてきたんだ。別に監督が「スタートレック」ファンである必要はなかったのさ。最初は「スタートレック」を監督するには「スタートレック」をよく知っていて大ファンじゃなければダメなんだと思ってたんだけどね。もし僕が脚本を読んだ時に感じた興奮をファンじゃない人が映画を観に行った時に同じように感じて欲しいとしたら、それは多分ファンじゃない人間が監督しなけりゃいけないんだ。二番目の質問については、今のところ僕は、他の番組や映画を作ろうとは考えてないってことかな。「ミッション・インポッシブル」をやったばっかりで今度は「スタートレック」だろう、まるでレナード・ニモイを主役にした 1960 年代のテレビ番組をやってるような感じだよ。


オリジナルシリーズでは船上の各ステーションにはコントロール装置としてレバーやノブ、ボタンなど機械的な装置がありました。後のシリーズや映画では現在のタッチスクリーンから発展した形のインターフェイスになっています。私達の技術は随分と電子的になっていますが、あなたはオリジナルシリーズのイメージを保ってそれでも「未来的」なコントロール装置を示せますか。 Joshg

43年前に想像した未来と現在想像する未来との折り合いをつけようとしてみたんだ。映画に出てくるものが僕らが使っているコンピュータのインターフェイスと同じくらい具体的で触覚型のものに感じてもらえればいいと思ったんだけど、今だってホログラフ表示装置がないわけじゃないし、今時の SF じゃそんなものはどこにでも出てくるんだから、今から何百年も未来がそうだなんて仮定するのは不合理だよね。だから、そういうものはあまり目立たせないようにしたし、ストーリー上重要にならないようにしてみたよ。製作上でも、ある船で始めてから後でエンタープライズに移らなきゃならなかったし、それは次世代の船じゃなけりゃいけなかったんだ。最初のヤツはより潜水艦的に不細工で暗く金属的にしようとしたし、「エンタープライズ」はより明るく輝いていてとても新しく感じるようにしたのさ。


主要製作陣(あなた、バーク、カーツマン、リンデロフ、オーチー)と他の創作に関わるメンバーはこの映画製作のためにどのくらい Memory Alpha を使用しましたか。Memory Alpha はソースとして権威があると思いますか。 Figmillenium

正直に言って、僕は使わなかったんだけど、脚本家達はかなり使ったんじゃないかと思うね。間違いじゃなければ映画でコンサルタントはちゃんと働いてたから。でも彼らは実際に尋ねるのにいい人達なんだ。僕は脚本家やコンサルタントがサポートチームとしていつでもよくやってくれてたと思ってるけど、じゃあ彼らは何を頼っていたのかというのは聞いてみないと判らないね。


オリジナルシリーズは随分と長生きしていて、製作当時は冷戦と国連に類似した設定や、アメリカの人種差別と公民権運動のほのめかし(テレビで最初の異人種間のキス)がありましたが、今日では既にそれらは社会に受け入れられているため、映画作りの参考とするのは難しかったのではないですか。 Zidel333

J・J・エイブラムス :「スタートレック」が世に出た時期にはベトナム戦争や冷戦、ロシアの脅威、多くの人種的社会的問題が持ち上がっていたよね。この番組は全ての文化や人々が受け入れられた未来を楽観的に表現していて皮肉っぽいところなんてなかった。でもそれは第三シーズンまでしか放送されなかった。そして、その後シンジケートに乗る[2]まで本当には機能しなかった。異人種間でのキスや、ロシア人、アフリカ人やアジア人でも同じだけど、の乗組員っていうのは今じゃ昔ほどのショックは与えないだろうと思うよ。皆に、僕達が生き残るのは社会的な、宗教的な人種的なそういう境界を意識しないようにするしかないんだってことを皆に思い出させる必要があるんだ。それは今だって50年前と同じくらい必要なことだと思うよ。悲しいことかもしれないけどね。それでも「スターウォーズ」の「遠い昔、遥か彼方の銀河で・・・」というのとはまた違った、僕達自身の将来に対して楽観的な希望を表している映画に取り組めてよかったと思ってるんだ。「スタートレック」っていうは僕ら自身なんだよね。だからこの楽観主義っていうのはジーン・ロッデンベリーが最初に「スタートレック」を作りはじめた時と同じくらい、今も価値あるものだと思うんだ。


この Q&A に答えてくれたエイブラムスと全ての関係者に大変に感謝します。 --Jörg 22:02, 12 May 2009 (UTC)

脚注

  1. アメリカの FOX テレビ放映の SF ドラマシリーズ。アレックスはアレックス・カーツマン(Alex Kurtzman)、ボブはロベルト・オーチー(Roberto Orci) のこと
  2. 地方局での再放送

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